秋になると鮮やかに咲き誇る彼岸花(ヒガンバナ)。
一方で「リコリス」という名前も耳にしたことがあるけれど、同じ花なのか、それとも違う花なのか迷ったことはありませんか。
彼岸花とリコリスの違いは、見た目が似ているだけに混同されやすく、多くの人が疑問に感じるポイントです。
今回は、それぞれの特徴や花言葉、不吉とされる理由から育て方までを分かりやすく解説します。
目次
彼岸花とリコリスの違いとは?
彼岸花とリコリスは、どちらも秋に咲く美しい花としてよく知られています。
しかし名前の使われ方や範囲には違いがあり、園芸や文化の場面で混同されやすい存在です。
ここでは、彼岸花とリコリスの関係性や、それぞれの特徴を整理して解説します。
彼岸花は赤い花を指す特定の品種
彼岸花は、日本の田んぼのあぜ道や墓地などでよく見られる赤い花を指します。
正式には「リコリス・ラジアータ」と呼ばれる品種で、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の名でも知られています。
お彼岸の時期に鮮やかな赤い花を咲かせるため「彼岸花」と名づけられ、古くから人々の生活や信仰に結びついてきました。
毒をもつ植物としても有名で、かつては畦道や墓地に植えることで動物の侵入を防ぐ役割も果たしてきたと言われます。
このように「彼岸花」という言葉は、リコリス属の中でも赤色の花を持つ特定の花を表すのが一般的です。
リコリスはヒガンバナ属全体の総称
リコリスは、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の植物全般を指す言葉です。
赤い彼岸花もその一員ですが、それ以外にも白、黄色、ピンク、オレンジなど多彩な花色を持つ品種が存在します。
代表的なものには、黄色のショウキズイセン、白いシロバナマンジュシャゲ、夏に咲くナツズイセンなどがあり、いずれもリコリス属に分類されます。
近年は園芸用として改良された品種も多く、庭や鉢植えで楽しむ花として人気が高まっています。
つまりリコリスは、彼岸花を含むより大きな枠組みを表す言葉として理解するとわかりやすいでしょう。

見た目が似ているため混同されやすい理由
彼岸花とリコリスは、花の形が非常によく似ているため混同されがちです。
どちらも花弁が反り返り、細長い雄しべが外側に伸びる独特の姿をしており、一見すると同じ花のように見えます。
また、園芸店では「リコリス」という名前で販売されている中に赤い彼岸花が含まれていることも多く、名前の使われ方があいまいなことも誤解を生む要因です。
さらに、彼岸花とリコリス・インカルナータ(ピンクの花)などは色以外の違いが少ないため、写真や実物だけでは区別が難しいこともあります。
このように、見た目の共通点と名前の使われ方の幅広さが、混同を引き起こす理由となっているのです。
彼岸花とはどんな花?
彼岸花は秋の訪れを象徴する花で、日本の風景に深く根付いています。
赤く鮮やかな花を咲かせる姿は印象的で、昔から人々の生活や信仰とも結びついてきました。
ここでは彼岸花の特徴を詳しく見ていきましょう。
お彼岸の時期に咲く日本原産の花
彼岸花は、その名の通り秋のお彼岸の時期に開花する花です。
日本では古くから田畑や道端に自生しており、季節を知らせる花として親しまれてきました。
花が咲くのは9月前後で、ちょうど昼と夜の長さが同じになる秋分の頃と重なります。
鮮やかな赤い花を一斉に咲かせる姿は、稲刈りの季節を彩る風景としてもよく知られています。
日本人にとっては季節の変わり目を感じさせる、象徴的な花といえるでしょう。
花と葉が同時に見られない独特の特徴
彼岸花には「葉見ず花見ず」と呼ばれる特有の性質があります。
これは、花と葉を同時に見ることができないという特徴を表しています。
秋になると茎だけを伸ばして花を咲かせ、花が終わると初めて葉を出すという生態です。
この習性は、花だけが際立って見えるために幻想的な印象を与え、多くの人の心に残ります。
他の植物にはあまり見られない珍しい特徴で、彼岸花が特別視される理由のひとつになっています。

墓地や田んぼのあぜ道などでよく見かける理由
彼岸花は、日本の田園風景や墓地などで群生している姿をよく見かけます。
これは観賞用として植えられたのではなく、実用的な理由もあります。
彼岸花には強い毒があるため、モグラやネズミなどが田畑を荒らすのを防ぐ役割を果たしてきました。
墓地でも同様に、動物の侵入を避けるために植えられたとされています。
そのため、彼岸花は「不吉」と思われることもありますが、実際には人々の生活を守るために役立ってきた花なのです。
強い毒性をもつため注意が必要
彼岸花の球根には、リコリンという毒が含まれています。
摂取すると嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こすため、誤って口にするのは大変危険です。
花や葉にも毒性があるため、観賞する際や子どもが触れる際には注意が必要です。
ただし、かつては飢饉の際に球根を水にさらして毒を抜き、非常食として利用されたこともあります。
生活の中で工夫されながら利用されてきた歴史を持つ花でもあります。
このように彼岸花は美しいだけでなく、毒を持つことで人々の暮らしに影響を与えてきた植物なのです。
リコリスとはどんな花?
リコリスは、ヒガンバナ科ヒガンバナ属に分類される植物の総称です。
日本では「彼岸花」という名前が先に広まりましたが、リコリスには多彩な種類や品種が存在し、観賞用として広く栽培されています。
ここではリコリスの基本的な特徴を詳しく見ていきましょう。
リコリス属に属する多彩な園芸品種
リコリスは、一つの特定の花を指すのではなく、ヒガンバナ属に含まれる植物全般を表す言葉です。
そのため、赤い彼岸花もリコリスの一種に含まれますが、それ以外にも数多くの園芸品種が存在します。
ショウキズイセン(黄色)、ナツズイセン(夏咲き)、シロバナマンジュシャゲ(白花)などは代表的な種類で、いずれも庭や鉢植えで人気があります。
園芸用に品種改良が進んだものも多く、ガーデニング愛好家の間では「秋を彩る花」として注目される存在です。
赤だけでなく白・黄色・ピンクなど豊富な色がある
リコリスの大きな魅力は、その豊富な花色にあります。
日本でよく知られているのは赤い彼岸花ですが、リコリスには白や黄色、淡いピンク、オレンジなど、多彩な色を持つ品種がそろっています。
特に白い花を咲かせるシロバナマンジュシャゲや、可愛らしいピンクのインカルナータは観賞用として人気が高く、庭に華やかさを添えてくれます。
色ごとに花言葉も異なるため、贈り物やシンボルフラワーとして選ばれることもあります。
この多様な色彩こそが、リコリスがガーデニングで広く親しまれる理由のひとつです。

西洋で人気が高く庭を彩る球根植物
リコリスは日本や中国だけでなく、西洋でも高い人気を誇る花です。
特にヨーロッパでは庭を彩る球根植物として広く栽培されており、秋の花壇に彩りを添える存在となっています。
球根から毎年花を咲かせるため手入れが比較的簡単で、初心者でも育てやすい点も魅力です。
また、品種によっては夏から秋にかけて順番に開花するため、長い期間楽しめるのも特徴です。
庭や公園に群生する姿は華やかで、季節の景観を豊かにしてくれます。
代表的なリコリスと彼岸花の品種
リコリス属には数多くの品種があり、それぞれ花の色や咲き方に個性があります。
日本でよく見られる彼岸花をはじめ、黄色や白、ピンクなど多彩な種類が揃い、ガーデニングや観賞用として人気を集めています。
ここでは代表的な品種を紹介します。
ヒガンバナ(リコリス・ラジアータ)
彼岸花として最もよく知られているのが、リコリス・ラジアータです。
鮮やかな赤い花を秋のお彼岸の時期に咲かせるため「彼岸花」と呼ばれ、曼珠沙華の別名でも知られています。
日本各地の田んぼや墓地に群生しており、秋の風物詩として親しまれています。
強い毒を持つことでも有名で、古くから動物避けとして植えられてきました。
ショウキズイセン(黄色いリコリス)
ショウキズイセンは、鮮やかな黄色の花を咲かせるリコリスの仲間です。
日本各地で見られることが多く、太陽の光を思わせる明るい色合いが魅力です。
赤い彼岸花に比べると華やかで温かみのある印象を与え、庭や花壇に彩りを添える存在として人気があります。

シロバナマンジュシャゲ(白い彼岸花)
シロバナマンジュシャゲは、赤い彼岸花とショウキズイセンが自然交雑して生まれた品種とされています。
純白の花を咲かせる姿はとても神秘的で、清らかさを象徴する花として親しまれています。
ただし繁殖力が弱く、数が少ないため希少性の高い品種です。
ナツズイセン(夏咲きのリコリス)
ナツズイセンは、リコリスの中でも夏に咲く珍しい種類です。
淡いピンク色の花を咲かせ、優しく柔らかな雰囲気を持っています。
彼岸花が秋を代表する花であるのに対し、ナツズイセンは夏の庭を彩る存在として楽しまれています。
インカルナータ(ピンク色のリコリス)
インカルナータは、可愛らしいピンク色の花を持つリコリスです。
花びらには桃色や紫色の筋が入り、上品で華やかな印象を与えます。
ガーデニング用としても人気が高く、庭に彩りを添える観賞価値の高い品種です。
よく間違われる「リコリス」とは?
「リコリス」という言葉は、花だけを指す場合と、それ以外の意味で使われる場合があります。
そのため、園芸のリコリスと全く別物の植物や食品と混同されることも少なくありません。
ここでは代表的な勘違い例を整理しておきましょう。
スペインカンゾウ(甘草)との違い
「リコリス」という英語名は、ヨーロッパで古くから生薬として用いられてきたスペインカンゾウ(甘草)を指すことがあります。
こちらはマメ科の植物で、根を乾燥させて薬や甘味料に利用してきました。
一方で園芸のリコリスはヒガンバナ科に属し、花を観賞する目的で育てられます。
全く別の分類に属するため、同じ名前でも用途も性質も大きく異なるのです。
リコリス菓子は植物とは別物
北欧やヨーロッパでは、スペインカンゾウの根を原料にした「リコリス菓子」が親しまれています。
黒色の独特な風味を持ち、キャンディやグミとして販売されています。
ただし、これは観賞用のリコリスの花とは無関係です。
同じ「リコリス」という名前がつくために混同されやすいのですが、花を食べることはできず、毒性もあるため注意が必要です。

ネリネ(ダイヤモンドリリー)との違い
ネリネはヒガンバナ科に属する花で、花の形がリコリスに似ていることから「彼岸花の仲間」と誤解されがちです。
特にダイヤモンドリリーと呼ばれる品種は、光を反射して輝く花弁が美しく、園芸でも人気があります。
しかし分類上はネリネ属に含まれるため、リコリスとは異なる植物です。
見た目の共通点から混同されやすいものの、それぞれ独自の魅力を持つ別の花として理解することが大切です。
彼岸花とリコリスの花言葉の違い
彼岸花とリコリスは、同じ仲間でありながら花の色によって花言葉が異なります。
赤だけでなく白や黄色、ピンクなど多彩な品種が存在し、それぞれに象徴的な意味が込められています。
ここでは代表的な花色ごとの花言葉と、「怖い」と言われる理由について紹介します。
赤い彼岸花・リコリスの花言葉
赤い彼岸花は「情熱」「独立」「再会」「悲しい思い出」などの花言葉を持ちます。
鮮やかな赤色は強い感情を連想させ、愛や別れと深く結びついてきました。
「また会う日を楽しみに」という前向きな意味もある一方で、墓地や死のイメージと重なり、哀愁を感じさせる面もあります。
そのため、赤い花は人生の光と影を同時に象徴する存在だと言えるでしょう。
白い彼岸花・リコリスの花言葉
白い彼岸花は「また会う日を楽しみに」「想うはあなたひとり」といった花言葉を持ちます。
赤よりも穏やかで清らかな印象を与え、別れや再会を静かに表現する意味合いが強いです。
純白の花は神秘的で、特別な人への想いを象徴する花として愛されています。
その希少性からも「特別な存在」というニュアンスが込められているのです。

黄色やピンクのリコリスの花言葉
黄色いリコリスは「追想」「深い思いやり」「陽気」といった花言葉を持ちます。
明るい色合いから元気や前向きさを連想させ、赤や白とは違う温かいメッセージ性を持ちます。
また、ピンクのリコリスには「優しさ」「愛情」などの意味があり、華やかさと可憐さを兼ね備えています。
庭を彩るだけでなく、贈り物としても選ばれることの多い花です。
怖い意味があると言われる理由
彼岸花やリコリスが「怖い花言葉を持つ」と言われるのは、花そのものの意味というより文化的背景に由来します。
墓地やお彼岸に咲く花であること、また毒を持つ植物であることから「死」「別れ」「不吉」といったイメージが結びついたのです。
しかし実際の花言葉には「情熱」「再会」「想うはあなたひとり」など、前向きで人の想いを表すものも多く含まれています。
ネガティブな側面だけでなく、花本来の魅力やメッセージを知ることが大切です。
なぜ彼岸花は不吉と言われるのか?
彼岸花は美しい花でありながら、日本では「不吉」「縁起が悪い」と語られることが少なくありません。
その背景には、咲く時期や見た目、そして植物としての性質が深く関わっています。
ここでは彼岸花が不吉とされる理由を解説します。
墓地やお彼岸との強い結びつき
彼岸花が不吉とされる最も大きな理由は、墓地やお彼岸との関係です。
秋のお彼岸の時期に必ず花を咲かせることから「彼岸花」と名づけられ、先祖供養や死と直結するイメージがつきました。
また、墓地の周辺に植えられてきた背景もあり、自然と「死」や「別れ」と結びついて語られるようになったのです。
このため、美しい花でありながらも哀しみや不吉さを連想されやすい存在となっています。
炎のような花の形と色
彼岸花は、燃え盛る炎のように反り返った花びらと鮮やかな赤色を持ちます。
その姿は情熱的で美しい一方で、人によっては恐ろしさや不吉さを感じさせる要素ともなります。
昔から「炎=死や地獄」のイメージが強かったため、花の見た目がその印象を助長したと考えられます。
こうした視覚的な特徴が、彼岸花に「怖い」という印象を与える大きな理由なのです。

毒を持つ植物であること
彼岸花は強い毒を持つ植物であることも、不吉とされる要因です。
球根にはリコリンという成分が含まれ、誤って口にすると嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こします。
そのため、子どもや動物が触れると危険とされ、注意を促されてきました。
人々の生活に密接に関わる田畑や墓地に植えられながらも「毒花」として恐れられてきた歴史が、彼岸花を不吉な花とする文化的背景につながっています。
彼岸花・リコリスの育て方
彼岸花やリコリスは、球根植物として毎年花を咲かせる比較的育てやすい花です。
しかし、美しく咲かせるためには植える場所や水やりの方法など、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
ここでは基本的な育て方を紹介します。
植え付けに適した場所と土壌
リコリスや彼岸花を育てる際は、水はけのよい土壌を選ぶことが大切です。
湿気がこもると球根が腐りやすいため、庭に植える場合は高植えにするのがおすすめです。
また、適度に日の当たる場所を選ぶことで、花がより鮮やかに咲きやすくなります。
土壌は赤玉土や腐葉土を混ぜて通気性を良くすると良いでしょう。
水やりと日当たりの管理
彼岸花やリコリスは乾燥に比較的強く、過湿を嫌います。
鉢植えの場合は土の表面が乾いてからたっぷりと与え、地植えでは基本的に水やりの必要はありません。
また、葉が出ている時期はしっかり日光に当てることで球根が育ち、翌年も花を咲かせやすくなります。
成長期と休眠期を意識して管理することが元気に育てるコツです。

鉢植えで育てるポイント
鉢植えの場合は、深めの鉢を使い球根の上に3cmほど土をかぶせて植え付けます。
土が乾いたら水を与える習慣を守れば、特別な手入れがなくても花を楽しめます。
また、2〜3年ごとに植え替えを行うことで球根の詰まりを防ぎ、花付きもよくなります。
初心者でも扱いやすいため、庭だけでなくベランダでも楽しめる花です。
注意が必要な品種(シロバナなど)
数あるリコリスの中でも、シロバナマンジュシャゲはやや弱く栽培に注意が必要です。
赤い彼岸花や黄色いリコリスに比べて病気にかかりやすく、植え付け後にうまく育たないことがあります。
また、球根の力が弱まると花をつけにくくなるため、環境を整えて大切に管理することが大切です。
珍しい品種だからこそ丁寧に扱うことで、白い花の清らかな美しさを楽しめます。
まとめ:彼岸花とリコリスの違いを知って季節の花を楽しもう
彼岸花とリコリスはよく似た花ですが、厳密には指す範囲が異なります。
彼岸花は赤い花を咲かせる特定の品種を意味し、秋のお彼岸の頃に日本各地で見られる馴染み深い花です。
一方でリコリスは、ヒガンバナ属に含まれる花全体を指し、赤に加えて白・黄色・ピンクなど多彩な色を楽しめる園芸品種を含んでいます。
また、墓地や毒性などの背景から「不吉」と語られることもありますが、花言葉には「再会」「想うはあなたひとり」など前向きな意味も多く込められています。
庭や鉢植えで育てる際には、水はけのよい土壌や日当たりを意識すれば比較的簡単に育てられ、季節の彩りを楽しむことができます。
違いを正しく理解することで、不安なイメージにとらわれず、本来の魅力に触れることができるでしょう。
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